日常を表現するということ。

日菓(にっか)杉山 早陽子さん 内田 美奈子さん

和菓子に息づく雅な世界。
それは日本の四季や
自然の情景を愛おしみ、
自然と寄り添って生きていた
昔の人々の暮らしの形。
そこに現代の日常というエッセンスを
注いだ日菓のお二人。
彼女たちの新しい和菓子の世界から
今よりもっと心豊かになれる
暮らしのヒントが見えてきました。

● プロフィール

「日々のお菓子」「毎日食べたいお菓子」という想いを込めて、和菓子文化の新しい楽しみ方を提案する創作和菓子ユニット<日菓>。
工房での月二回の店頭販売「月一日菓店」をはじめ、ギャラリーやカフェでのワークショップ、著書の出版など、京都を拠点に幅広く活躍中。

“今”を表現する和菓子 “今”を表現する和菓子

 日菓の創り上げる和菓子は、時代に合った新しい感性で楽しむことができるお菓子。日常の中で見つけた出来事を、クスッと笑えるかたちにして表現しています。
「日常の風景を抽象化するということは、昔の人たちがやっていたことと同じなのかな、と思います」と杉山さん。
例えば、和菓子の意匠では定番の花筏(はないかだ)。これは花びらが川に落ちて筏のように漂う様子を表したもの。
「でも、現代の人たちにはイメージしづらいと思います」。これを日菓がつくると、現代の乗り物をモチーフにした和菓子ができ上がります。
 和菓子の表現力や奥深さを時代にあった形で作り出すから、“年配の方が楽しむもの”という従来の和菓子のイメージがなく、見る人を惹きつけます。
 そんな日菓のこだわりは、学んできた和菓子の製法からは外れないこと。
「和菓子本来のおいしさを知ってもらいたいと思っているので、フレーバーやチョコレートなどは使いません。素材の味でおいしくするのが目標です」とにっこり笑う内田さん。
 伝統の味と今を生きる人たちの日常を織り交ぜた世界が、日菓の和菓子の魅力です。

多くの人に伝えたい日菓の視点 多くの人に伝えたい日菓の視点

 日菓の活動は、お茶会や稽古のお菓子や結婚式の引き出物などの受注販売がメイン。そこで今回、この取材のためにオリジナルの和菓子を制作していただきました。
菓銘は『四畳半の庭』。くちなしで色をつけたきんとんの芝生が、畳のように四畳半の空間を作っています。
「四畳半は省スペースながらも、ある時は寝室になり、ある時は食事をするスペースになり、そして茶室にもなる。コミュニケーションの場として多目的に使える完璧な空間だと思います」。
限られた空間を工夫して活用することで、それぞれの暮らしにあった“ちょうど良さ”を生み出すのは、日本人らしい美意識でもあり、賢い暮らし方。
この家の内側と外側を融合させた不思議な作品に、垣根のない人と自然の関係に気付かされます。「芝生で四畳半ができたら面白い!」感じたことを素直に表現するからこそ、新しい視点を教えてくれるのかもしれません。

ひまりの取材後記

-和菓子とコミュニケーション-

「風景を、そのまま写し取らないように気をつけています」。取材の合間、日菓の作品を前に語った杉山さん。
身のまわりにあるものを抽象化して表現することで、私たちに“想像する”時間をくれる日菓の和菓子は、ここに奥深さがあるのだと思います。想像するからこそ生まれる“共感”や“反応”でお客様とのコミュニケーションをとる日菓は、和菓子を通して、社会や人と向き合っているのです。
それはきっと昔の人たちが自然を表現してきたのも同じで、<おもてなし>の心に通じるもの。「食べるだけのもの」と捉えず、良い意味で期待を裏切る“何か”をしのばせる。これこそが、日本人ならではの感性なのでしょう。
 冷たい秋雨の降る夕方、私は持ち帰った菓子箱をはやる気持ちで開きました。『わたしごろ、暮らしごろ』のためのお菓子です。きれいな緑色の小さな“四畳半の庭”。一口食べるときんとんの自然の甘さがふわっと広がり、芝生でくつろぐお二人の穏やかな笑顔が浮かんできました。

背景は日菓さんの包装紙。
見た目にも楽しい作品たちがデザインされています。

SHOP INFORMATION

日菓

京都府京都市北区紫野東藤ノ森町11-1

日菓の活動拠点となる工房です。ここでは、月二回の店頭販売やワークショップの開催、オリジナル意匠のお菓子の受注生産を行います。店頭販売とワークショップ開催の詳しい情報は、日菓のホームページもしくはFacebookでご確認ください。

詳しくはこちら

日菓

ページTOPへ