循環するということ。

深見木藝深見 昌記さん

木を加工し、暮らしに活きる道具として
形を変える家具職人。
そのひとりである深見さんは、
人と自然の関係性をどのように考えているのでしょうか。
自然素材と向き合い、木を知り尽した
深見さんだからこそわかる、
現代の暮らしにとって大切なことをお伺いしてきました。

● プロフィール

「ものづくりがしたい」という想いでサラリーマンから転身。江戸指物の家系の木工藝家・前田純一氏に3年半師事し、手仕事と自然素材を大切にした家具工房『深見木藝』を設立。オーダーメイドのオリジナル家具を製作する他、各地の展示会への参加、各種メディアに紹介されるなど活躍中。

“今”を表現する和菓子 “今”を表現する和菓子

 深見木藝の家具は、自然素材を使って作られています。
 木の加工は数十種類の鉋を使い分けて、心地いい手触りと美しい木目を削り出し、植物性のオイルや石鹸水、漆、アカネやザクロといった草木で染めるなどして仕上げます。
 これらはとても手間のかかる昔ながらの技法ですが、自然の素材がもつ本来の美しさや力強さを際立たせ、年を重ねるごとに深い味わいが出て、より一層魅力が増すそうです。「それに人が安心して使えますし、環境にも優しいので」という深見さん。人体にだけでなく、環境にも良いというのはどういうことなのでしょうか。

「主な材料となる木も、テーブルや椅子の脚に使ったりする鉄も、やがては腐り無くなります。最終的には土に返る素材なんですね」。
 また、家具の製作に1本の木を使うにしても、いい部位は材料になりますが、使えない部位もあります。使えない部位は薪や炭に使い、灰になったら土に返し、再び木を育む土壌を作ります。
 「寒い冬にストーブで暖をとるのも、ご飯を炊き料理を作るのも、長野の生活では当たり前のように薪を使っていました。最初のうちは、慣れない不便さは感じても、そこに意味があることに気づきませんでした」。

全てを活かし、無駄なく使う。自然のサイクルに合わせて“循環させる”ということを修行時代に深見さんは教わったと言います。
自然素材を使うことは職人として木に感謝と敬意を示すこと。それが深見さんのものづくりに対する姿勢なのです。

多くの人に伝えたい日菓の視点 多くの人に伝えたい日菓の視点

 家具を作る上でもっとも大切にしていることは、“その人の暮らし、使い方をイメージする”こと。注文を受ける時は、「ここに○○を収納したいから、これぐらいの引き出しが欲しい」というような具体的な要望を聞き取って製作します。それはまさに、置いた瞬間から生活に溶け込む家具といえるでしょう。
 受注生産の合間には、新製品の構想を練ったり、日常使いの小物などの作品づくりに打ち込んでいます。ショップのキャビネットの上に展示された“栗の木のカゴ”もその中のひとつ。すぐに取り出して使うタオルや衣類を収納するものが欲しいと思い、発案したものだそうで「このカゴ、割と人気なんです」と、嬉しそうに教えてくれました。

 あくまでも主役は生活や人であり、家具や小物は生活の一部という考えが主軸という深見さん。デザインがいくら斬新であっても、使い勝手が悪ければ家具として機能せず、人の趣向や時代が変われば飽きられてしまうと言います。
「家具は主張していい部分とし過ぎてはいけない部分があると思っています。近年では、住宅の建物がシンプルになってきているので、特にそのバランスを考えて作るようになりました。シンプルなデザインで使いやすく、長く使えるようにと。引き出しの取っ手の金具とかちょっとしたところに遊び心を加えたりして、細かいところにこだわれば、自分らしさは出せます」。
 心地よい自然素材の家具を提供し、快適な暮らしという喜びを人に与え、それを自身の喜びとする深見さんのものづくり。それが人の住む環境への配慮“循環する”ことにも繋がっているのです。人と自然の深い関わりをまた1つ見つけたようで嬉しくなりました。

ひまりの取材後記

 閑静な住宅地の中にある深見木藝さんの工房。訪れた途端、一気に木の香りに包まれました。
 深見さんは気さくながらもまっすぐな方で、こちらの問いかけに「うまく言葉にしにくいのですが」と言いながらも、丁寧に答えてくださいました。
 お話を伺っていた木のテーブルも深見さんの作品。放射状にかけられた鉋の跡が美しく、そのやさしい手触りに思わず表面を何度もなでてしまいます。「自然素材なので扱いが難しいところもあるんですが、デメリットも理解した上でものづくりをしています。質感だったり、その素材の持つ良さを最大限に伝えたい」。
 木の命をいただくことに感謝しながら、長く暮らしに寄り添うものを作ることへの想い。深見さんの穏やかな表情の中に、職人としてのこだわりが垣間見えた瞬間でした。

SHOP INFORMATION

深見木藝

愛知県名古屋市中村区乾出町3-26

月に1度土・日曜日に営業される2階のショップでは、テーブルや椅子、キャビネットなどの家具の他、木の日用雑貨、「染織十字屋」の草木染手織りのストールなどを販売。また、企画展や新作展などのイベントも開催されます。ショップの営業日、イベントなどの情報はホームページにてご確認ください。

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深見木藝

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